特別講演

若者の自殺関連行動と予防教育について


演者 内田千代子

我が国の自殺者は、1998年に3 万人を越え大きな社会問題になった。その後10年以上を経てようやく3万人を下り、自殺者は最近減少傾向となっている。ところが10代、20代、30代の若者の自殺の減少は認められず、自殺が死因の1位を占める状態である。

中高年の自殺に比べて若者の自殺は少ないものの、将来のある若者の自殺は痛ましいものである。学校でのいじめを苦にした10代の自殺の報道は後を絶たず、訴訟に発展したケースも少なくない。学校問題をはじめとして家庭や社会環境の影響等、社会心理的な問題は自殺の大きな危険因子となる。自殺とうつ病などの精神疾患との関連も深い。

自傷行為や自殺未遂なども含めて自殺関連行動といわれるが、自殺者の10倍から100倍ほどあるといわれる。自殺関連行動は、自殺既遂の危険因子でもある。また、若者は大人よりも衝動的に自殺を考え行動に移す傾向があり、被暗示性が強く、他者の自殺の影響を受けやすい。それゆえ、群発自殺といわれる現象も起こりやすい。

自殺予防のためには、プリベンション(危険因子、サインを知ること)、インターベンション(危機介入)、ポストベンション(自殺が起きた後のケア)が必要である。震災、原発事故被害を受けた福島県は、特殊な状況下にあり、自殺の危険因子を含めて考えるべきことが多い。現状をとらえた上で、プリベンションとして重要とされる予防教育の可能性についても触れたい。


演者略歴

内田千代子 こどものメンタルヘルス支援事業推進室、

福島大学人間発達文化学類 人間発達専攻(心理学系、特別支援)教授

医学博士、精神科専門医、精神保健指定医、 日本医師会認定産業医、中高教諭普通免許(理科)

 

略歴 

群馬県出身

東京大学農学部農芸化学科卒後、東京大学教育学部学士入学を経て、1985東京医科歯科大学医学部卒。東京医科歯科大学にて研修。米国イエール大学関係病院、子ども研究センターで青少年の精神科臨床を学ぶ。スイス製薬企業臨床研究部門でうつ病やADHDの治療薬について研究。法務省医療少年院、企業立総合病院神経科医長、茨城大学保健管理センター等を経て2012年より現職。

大学生の留年休学退学および自殺等の調査を長年実施し、若者のひきこもりや自殺問題に取り組んできた。不安障害、気分障害、発達障害を中心とした臨床に従事。

著書に 「ひきこもりカルテ」法研、「自殺予防の実際」(共著)永井書店など。

座長:生島 浩

福島大学 人間発達文化学類 人間発達専攻(心理学系)教授

子どものメンタルヘルス支援事業推進室 副室長